回転着脱義歯製作の考え方【前編】

 こんにちは、自費義歯専門歯科技工所ルーファスデンタルの早澤です。
 今日は鋳造鉤の回転着脱義歯をどのように考えながら製作しているかについての概要を紹介します。

回転着脱義歯のしくみ

 回転着脱義歯は中間欠損症例で後方鉤歯の近心傾斜が強く、通常の着脱方向の設定では義歯遠心側の維持力が得られないような場合の解決策として有効な義歯の1つです。
 回転着脱義歯は前後の鉤歯でそれぞれ着脱方向が異なります。通常の着脱方向だと近心傾斜の強い後方鉤歯はクラスプ先端部での維持力確保が難しくなるため、補綴側鉤体部のアンダーカットを利用し、前方鉤歯の維持力を確保することで後方鉤歯に間接的な離脱抵抗力を発生させて義歯全体の安定を図ります。
 その離脱抵抗力を発生させるためには前方鉤歯の維持力確保が絶対条件で、この回転着脱義歯を製作するうえで最も難しいポイントだと考えています。
 回転着脱義歯のしくみを説明するために、画像内にある中間欠損部中央の点線を境にして、義歯をAパーツと Bパーツに分割して考えてみます。

①Aパーツを後方補綴側のアンダーカット部を着脱方向として装着します。
②Bパーツを義歯全体の着脱方向で装着します。
③AパーツはBパーツを外さない限り離脱することはありません。

回転着脱方向

 通常の義歯は着脱方向が単一方向のため、義歯を着脱するときには最大豊隆部を直線的に通過するのですが、回転着脱義歯は前後の鉤歯でそれぞれ着脱方向が異なるため、義歯の着脱方法も通常の義歯の場合とは異なります。
 回転着脱義歯の維持力確保には後方補綴側のアンダーカットを利用しているので、義歯の装着順序は最初にこのアンダーカット部を着脱方向として後方クラスプを入れます。
 後方クラスプが先に入ると、前方クラスプは通常の義歯のように着脱方向に沿って直線的に入るのではなく、後方クラスプを支点にして円を描くように入っていきます。
 その回転円が前方クラスプの着脱方向になり、回転円上で前方補綴側と接触する部分が把持ポイントの1つになります。
 また、この部分の把持ポイントは症例の条件(欠損部の幅、歯冠の高さ、前後鉤歯の上下関係など)によって位置が変わってくるため、模型上での調整を前提とした設計をしています。

回転着脱方向

「着」は後方鉤歯から、「脱」は前方鉤歯から

通常の着脱方向

着脱に順番はありません


 今日は鋳造鉤の回転着脱義歯をどのように考えながら製作しているかの概要を紹介しました。
 次回の後編では、実際の設計方法から調整方法までを紹介したいと思います。


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