回転着脱義歯製作の考え方【後編】
こんにちは、義歯専門歯科技工所ルーファスデンタルの早澤です。
今日は前回の「回転着脱義歯製作の考え方【前編】」に続き、今回も鋳造鉤の回転着脱義歯をどのように考えながら製作しているかについて、実際の設計方法から調整方法までを紹介します。
特殊な把持ポイント
回転着脱義歯は白の線で結んだ前方補綴側と後方補綴側の2点で向かい合った外側性把持と、赤の円で囲んだ前方補綴側を含む単独鉤歯の内側性把持との組み合わせで義歯全体の維持力が確保されていると考えています。
この2つの外側性把持と内側性把持には、両方とも前方補綴側の把持ポイントが含まれているため、この1点の把持ポイントを逃してしまうと義歯の維持力は大きく損なわれてしまいます。しかも、この把持ポイントは通常の直線状の着脱方向ではなく回転着脱方向上にあるため、とても繊細な調整が必要なポイントです。
後方補綴側の維持部
基本的にルーファスデンタルの設計には角度計を使いますが、後方補綴側の維持部を設計する場合には最初にアンダーカットゲージを使って0.5mmを計測し、その0.5mmのポイントに対して角度計を当てて度数(後方鉤歯の着脱方向)を割り出しています。
角度設計の特徴は角度計を垂直に当てている部分以外は必ずその設定角度以下になるため、アンダーカットを量で捉える必要がある場合でも、アンダーカットゲージと角度計を併用して設計しています。
設計プラン
外側性と内側性の2つの把持ポイントをベースにして義歯全体での設計プランを考えます。
回転着脱義歯の場合、前方補綴側は把持ポイントの0度を確保しながら、回転運動時の早期接触を避けるめに後方補綴側で設計した度数の「半分+2度」でテーパーラインを設定しています。
設計線
適合・維持力調整
ルーファスデンタルでは適合調整と維持力調整を作業用模型で同時に行わず、各調整を明確にするために「適合調整」と「維持力調整」の工程に分けて行います。
各調整にはそれぞれに調整用模型を準備します。調整ポイント以外の部分を削除し、模型とフレームの摩擦を軽減するためのベビーパウダーと2色の咬合紙を使ってひと工程ずつ正確に進めていきます。
今回は鋳造鉤の回転着脱義歯をどのように考えながら製作しているかについて、実際の設計方法から調整方法までを紹介しました。
前回のブログにも書いたように、回転着脱義歯は「欠損部の幅、歯冠の高さ、前後鉤歯の上下関係」などの条件によって設計方法が変わると考えています。
この紹介した設計方法も色々と試行錯誤を繰り返しながらルール化しましたが、さらに的確な設計をするために今後も「仮説・検証」を続けていこうと思います。
ルーファスデンタルでは角度計を用いた維持装置の製作実習会を開催しています。
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